そんなことがあってから、ハナアブは、毎日、欠かさず、クモのところにやって来るようになりました。
そして、花畑であったことを、クモに、以前よりもたくさん、おもしろ、おかしく、話すようになりました。
だんだんと、クモも、時には足場を離れてハナアブのとなりに座り、話に聞き入ったり、ほかの虫たちの暮らしぶりについて尋ねたりするようになりました。
花嫁衣装の仕上がりも順調でした。白い花々と甘い香りに包まれ、かすかな風にも、ふんわり、そよぎ、色合いと輝きを刻々と変えるさまは、一瞬たりとも目を離すのが惜しいほどでした。
でも、その頃になって、ハナアブは、ときどき、ふと、奇妙なことを考えていました。
『女神様は、ほんとうに、この衣装がお気に召すんだろうか・・・』
きらびやかで豪華この上ない女神の花嫁衣装。でも、ハナアブは、そこに、何か、とても大切なものが欠けているような気がしてならなかったのです。