「『犬が西向きゃ尾は東』なんて、当たり前のわかりきっていることのたとえだそうですが、人間も本当におかしな生き物だと思いますよ。人間だって前を向いたらおしりは後ろですよねえ。そんな当たり前のことを、なぜわざわざことわざにするんでしょうねえ」
犬のポチもふしぎそうです。
「そういやあ『犬えんのなか』っていうのは、なかがとても悪いことのたとえだっていうじゃないか。だれがオレたちサルと犬のなかが悪いって決めたのかねえ。人間の子どもだって『ももたろう』の話は知ってますぜ。ももたろうのけらいは犬、サル、キジ。なかよくなけりゃあ、おになんてたいじできないことくらいわかりそうなもんなんだがなあ」
物知りのサルのすけが首をかしげました。
みんなあれこれ人間にもんくを言いはじめたので、だれが何を言っているのか聞こえなくなったときです。
「ふわぁ」
大きなあくびの声にみんな、びっくりしました。
「ライオンは百じゅうの王と言ってくれる人間はいい生き物だと思うよ」
村長のライオン丸がのんびり口を開いたので、みんな急にだまりました。
「ほめてもらってるのは村長くらいなもんだよねぇ」
あちこちで、みんなのひそひそ声が聞こえます。
そのとき、後ろのほうから黒ヒョウの子どものヒョウタロウが出て来ました。
「みんないいなぁ。ぼくなんて、人間に悪いことすら言われないんだよ」
「そういえば黒ヒョウが何とかって聞かないわねえ」
みんなで考えましたが、だれ一人思い出せません。
「それじゃあ『暗やみに黒ヒョウ』っていうのはいかが?」
ネコのミー子がていあんすると、みんな大さんせい。
「かくれるのが上手な様子を言うんだね?」とコン吉が聞くと
「いつ何があるかわからないからゆだんするなってことでしょう?」とブタ子さん。
どっちがいいかなあとみんながなやんでいましたが、「かくれるのが上手なことがいいなあ」というヒョウタロウのひとことであっさり決まりました。