『ディア マザーグース』
ひらいたかこ 絵・訳
架空社
ひらいたかこ氏の著書との初めての出会いは、『グリムありますか』『アンデルセンください』(東京創元社)という本でした。著者がヨーロッパを旅しながら描いたスケッチと紀行文は、読みやすくて親しみやすく、こんな風に旅をしてみたいなあ、と異なる文化の国々に憧れを抱かせてくれました。これらの本ですっかり「ひらいたかこファン」になったわたしは『ディア マザーグース』が出された時も、迷わず手にしました。
期待以上の本でした。画本といっていいくらい、絵に輝きがあり惹きつける力があります。
描かれている動物、植物、人々、妖精、小物、そしてカテゴリー分けなどできないような、奇っ怪なものたち、それらが、とてもファンタジックに、カラフルに、躍動的に、可愛らしく表現されています。
愛らしいタッチ、美しい色合いの中にも、ナンセンス、不思議、恐怖、といったエッセンスが、随所にはさみ込まれ、「マザーグース」の世界観と「ひらいたかこ」の絵の世界が見事に融合して、独創的な世界を創り出しています。
『マザーグース』は、ご存じのようにイギリスやアメリカに伝承されてきた童謡で、古くから作家の想像力をかきたてると言われています。有名なところでは、ルイス・キャロル、アガサ・クリスティなどの作品に使われていて、日本では萩尾望都の『ポーの一族』にも出てきて、作品を盛り上げています。
訳では、北原白秋、近年では谷川俊太郎など、どちらも有名な名訳ですが、本著の訳はひらい氏自身です。同じ音をリズミカルに繰り返す「押韻」はマザーグースの特徴で、とても口ずさみやすく覚えやすくなっていますが、この『ディア マザーグース』の訳もまた、魅力的な絵と相まって、とてもすんなり入ってきます。
全部で41編の詩が掲載されています。
絵と訳、合わせて、著者のマザーグースへの深い愛と思いが感じられる本です。
好きなページを開いて絵をじっくり鑑賞するのもよいし、気に入った詩を口ずさんで覚えるのも素敵だと思います。
おとなも子供もいろんな楽しみ方のできる本だと思います。
ぜひ、楽しくて可愛らしくてちょっぴりこわいマザーグースの不思議世界のページを開いてみてはいかがでしょうか。