『おさる日記』
和田誠 作
村上康成 絵
偕成社
年に一度か二度、わたしの住む地域に「さる出没情報」が出ます。勤め先である児童クラブのこどもたちには「おさるを見ても、目をあわせちゃだめよ」と注意することしかできません。とても大切なことだけど、少し寂しい気もします。
そのむかしCMに、ヘッドホンをしたおさるがでていました。また動物番組で大人気だったおさるは、洋服をきて犬をつれて買い物にでかけていました。今ではお笑い番組で、きちっとネタまでやってみせる切れ者もいます。人間とのかかわりで、おさるたちもがんばっているのだと感心させられることもしばしばです。
さて、わたしのおすすめ『おさる日記』は、絵本というより読み物です。船乗りであるお父さんがお土産に連れて帰ってきた「おさる」のことについて、小学生の男の子・しんちゃんが日記に綴るという形式になっています。ですます調になったり、である調になったりと、小学生にありがちな文で淡々と書いてあります。
おさるが飼えるなんてそれだけでとっても楽しいのに、このおさるのもんきち、その成長ぶりが尋常ではありません!
学校の理科の時間、人間の先祖の話をきいたしんちゃんは日記に書きます。
「人間のまえはおさるだから、おさるをかっているのは学校でぼくだけだからおもしろかった」(本文より)
ブランコに乗り、バナナがむけるようになり、キャラメルの紙をむいて食べるようになり、積み木もできるようになったもんきち。テレビが大好きで、いつもテレビをみています。冷蔵庫をかってにあけてお母さんに怒られるまでになります。
(わたしが好きなシーンは、もんきちがリモコンでテレビのチャンネルをかえているところです。その手がキュート!)
まあ、このあたりまでなら、動物番組のおさるだってやっちゃえそうですが、でも、もんきちはちがうのです。毛はぬけ、ことばまでしゃべり、その先は……。
村上康成さんの画がとってもかわいくて素敵です。ページをめくるたびに進化するもんきちに出会えます。
そして、いよいよ最後のページを迎えます。初めてこの本を読み終わったとき「やられた」と思いました。さてわたしは、いったい何にやられたのでしょうか。それはどうぞ読んでみてお確かめください。この「やられた感」をぜひ味わってほしいです。
山からおりてくる野生のおさる、もんきちみたいにならないかなあ。児童クラブのお友だちのところへ「いっしょに遊ぼうね」って連れていってあげるのになあ。