第27回ひろすけ童話賞を受賞された、ささきさんに受賞作『おならくらげ』にまつわるお話をお聞きしました。本日はその第2回目。
◆生物として生まれた最大の目的は「生きること」
――『おならくらげ』を拝読しました。登場する子どもたちの悩みや心の動きがとてもよく書かれていますね。なぜ「おなら」をモチーフに選んだのでしょうか?
おならのあわが、くらげになりそうだという着想にはじまり、それから、おならくらげという生物がいるとしたら、どんな生態を持っているのか、なぜ、体の中から出てきたのか、ということを考えました。
考えるうちに、体のしくみに考えが及ぶようになりました。生物の体のしくみを知れば知るほど、実によくできていると感心します。突き詰めれば、どの生物も「どんな状態でも生きのびようとするしくみ」を備えているんです。つまり、生物として生まれた最大の目的は「生きること」なんだと思いました。
「おならくらげ」という体の中からでてきた生物、いいかえれば「魂」というようなものがいるとしたら、その人その人が持っているもの、個性というものを生かして、のびのびと生きてほしいと願うんじゃないかと思い、それを物語に表したつもりです。
――ノンフィクションでなく創作童話なのに、「調べる」という必要性はどこにあるのでしょうか?
想像のものでも物語のなかで存在させるためには、その生態を理屈上は説明できるようにしておかなくてはなりません。そうでないと、読者をフィクションの世界に呼び込むことができないでしょう。なんとなく存在していそうな生物にするためには、本当に存在している生きものからヒントをもらうのが、一番いいと思っています。
――子どもの心をとてもよくつかんでおられますが、お仕事などで子どもと接する機会が多かったとかでしょうか?
息子を育てるなかで、友だちが家によく遊びにやってきたこと。ある期間、小学校のPTA役員として毎日のように小学校に通ったことで、子どもと接する機会が増えました。それらの体験が、物語づくりにとても役立っています。
――ささきさんが物語を作る際、どのように考え発想するのでしょうか? ストーリーのネタや発想はどのようなところから集めるのでしょうか?
まずは、楽しい物語が書きたいとか、せつない物語が書きたいとか、なにか漠然とした色味みたいなものを思うところから始まることが多いですが、「おならくらげ」のように、なにか見かけたものがヒントになって生まれることもあります。
また、版元(出版社)からテーマを与えられ、制約があると、発想しやすいです。
ささきあり
千葉県出身。出版社勤務後、フリーランスの編集記者となる。『おならくらげ』(フレーベル館)で、第27回ひろすけ童話賞受賞。著書に『ふくろう茶房のライちゃん』(佼成出版社)、『せんそうってなんだったの? 父ののこした絵日記』(学研)、「おんなのこ めいさくえほん」シリーズ(西東社)などがある。日本児童文芸家協会会員。
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