それは、なんとも、不思議な光景でした。海の真ん中に、ぽっかりと、大穴が空いていて、太陽の下りてくるのを待っていました。
その穴をめがけて、海水が、ものすごい勢いで、ザーザーと、なだれこんでいました。
太陽はそこから地下にもぐり、夜の間に地底を旅して、夜明けに、再び、東の果てから上ってくるのです。
穴の近くの島には「夕べの神殿」が建っていて、黒い肌の美しい人々が守っていました。
人々はマガタの船隊が来た理由を知ると、
「どうか、おやめください」
と、黒ひげ提督に頼みました。
「この世に太陽ほどいつくしみ深いものがあるでしょうか? 太陽が、あまねく、地上を照らしてくれるから、私たちは、みな、大地や海からの恵みをえて、生きていけるのではありませんか」
「いつくしみ深いだと!? あいつはおおぜいの仲間の命を奪った悪者だ! 決して許すことはできぬ!」
提督は神殿の人々を追い払って、
「それ、ものども、穴にわなをしかけよ!」
と、命令しました。
「お言葉ですが、提督、あみの数が足りません」
航海の途中、たくさんのあみをなくしてしまっていたのです。
「ならば、このあたりの住人をかき集めて、あみを作らせよ!」
水兵たちは、いったん、大穴を離れて陸に上がると、地元の人たちをかき集めて、大急ぎで、できるだけたくさんのあみを作りました。
それから、それらをつなぎあわせて、1枚の大きなわなに仕立てました。獲物(えもの)が入れば、ひゅっと、口がすぼまるしかけです。