翌日、オレは電話会社で、四郎のとりはずしを中止するよう申し入れた。
「おっしゃることはわかりますが、会社の決定事項ですので」
係の男は、書類に目を通しながらいった。
「でも、あの公衆電話は特別なんや!」
「ねえ、ぼく、何度いったらわかるかなあ。会社が決めたことは、かえることができないんだよね。3日後にはとりはずすから」
「みんなの声を伝える会社が、あんな大事な電話をはずして、それでええんか!」
オレはカウンターをたたいた。オレの大声で、職員たちの仕事の手が止まった。
みんなは、オレのほうを見て、クスクス笑ったり、ひそひそ話をしている。
「もうええ! 子どもやと思ってバカにして」
オレは荒々しくドアを開け、部屋をとび出た。
足早にろうかを歩いていると、オレを呼び止める声がする。
「お客様、新宿東口の電話で何か」
ふりむくと小太りの男の人が立っていた。
「あんたはだれや」
「私はこの電話会社に長いこと勤めているもので、和田と申します。もしよろしければ、外のカフェでくわしく聞かせていただけませんか」
オレはオレンジジュースを飲みながら、和田という人に四郎のことを話した。
四郎はいろんなお国ことばを話せ、地方出身者の話し相手になっていること、四郎のおかげでみんな元気になっていることをすべて話した。
「ほう、そうですか。なるほど」
和田さんは身を乗りだし、オレの話を熱心に聞いてくれた。
「幸平くん、私をそこに連れていってくれませんか」
和田さんは立ち上がった。