2023年3月15日~4月8日、桜の美しい季節に3週間に渡って開催されていたBOOK展が無事に終了いたしました。
新河岸川沿いの一軒家画廊ギャラリーウシンには、盛りの桜見物の方々も多くいらっしゃり、春らしい賑わいでした。
会場では懐かしい出会いや新しい出会いがあり、楽しい3週間となりました。いらしてくださった方々、気に掛けてくださった方々に感謝いたします。
◆テーマは『ガリ版』
今年のテーマは『ガリ版』。若い方は「それ、何?」と思われるでしょうが、パソコンやコピー機が普及する前には、便利で手軽な印刷機として学校や会社で用いられていました。
ギャラリーのオーナーさんが、アンティークのガリ版機を手に入れたことから、今回の企画が動き出しました。
私、田村理江は、ガリ版にまつわるショートストーリーを5編作り、その物語に合う絵を5作描きました。会場では、物語文をファイルに収め、椅子も用意して、ゆっくり読んでいただけるようになっていました。
◆5作品を紹介
ガリ版物語の内容は、次の通りです。
『月の子奇譚』
僕のおじいちゃんは、この間、小学校の校長先生を引退した。そして、古い宝箱のような物を持ち帰り、僕にくれた。それはガリ版機で、おじいちゃんは昔、夜の学校で、ガリ版刷りを月の妖精に手伝ってもらったんだって。ほんとかな?
『あの子』
律子には、還暦目前に開かれる小学校の同窓会で、会いたい人がいた。同じ新聞委員で、ガリ版新聞を作る時に優しくサポートしてくれた赤い眼鏡の男の子。だけど、当日その子は来ていないどころか、クラスメートの誰一人、彼を覚えていなかった・・・。
『名も無い立役者』
シニア雑誌の編集長に抜擢された女性が、96歳の大御所脚本家に代表作の創作秘話を取材に行く。お元気な脚本家は当時の事を思い出し、ガリ版の台本の話題に触れながら、「実はあの作品の名台詞は、わしではなく、ガリ切りの学生さんが付け足したんだ」と衝撃的な事を話し出した。(次のページに続く)