WEB版『BOOK&another story』(3/5)

文・田村理江   絵・小野寺美樹

『モモ』アナザーストーリー  作・田村理江

ぞうさん滑り台は、名前の通り、ぞうをかたどった遊具で、いつの頃からか、その下におさげ髪の小さな女の子が住みついていました。小さいといっても、夜を怖がるほど幼くはなく、昼を退屈に過ごすほど大人でもない年ごろという意味です。

女の子のもとへは、たまにお客がたずねて来て、「カード」を道具に遊びます。
今日のお客は学生服の少年で、「3年分のカード、欲しいんだ」と、真面目な声で言いました。

「あいよ」
おさげを揺らし、女の子は少年の前に立つと、ポケットから画用紙で作ったカードを取り出し、そこにクレヨンで「3」と書きました。

「ありがとう。これをじいちゃんに渡したら3年寿命が延びる。ぼくが、じいちゃんと同じ大学に合格する姿をきっと見せられる」
少年は喜んで病院へ向かいました。

女の子の住む滑り台の天井には、カードがびっしり貼られています。
カードを買う人もいれば、売りに来る人もいます。
カードを盗まれないように、女の子はいつも真剣な顔で見張っています。

田村理江 について

(たむら りえ)東京都生まれ 成蹊大学文学部日本文学科卒業。日本児童文学者協会第15期文学学校を終了。 第6回福島正実記念SF童話賞を受賞して、『ガールフレンドは宇宙魔女』(岩崎書店)を出版。 児童書の作品に『リトル・ダンサー』(国土社)、『夜の学校』(文研出版)、『魔の森はすぐそこに・・・』(偕成社)など。絵本の作品に『ふなのりたんていラッタさん』(フレーベル館)、『ハンカチのぼうけん』(すずき出版)など。 HP:田村理江のページ

小野寺美樹 について

(おのでら みき)1995年千葉県生まれ。学習院大学経済学部経済学科を2017年の春卒業して、出版社勤務予定。2012年春から毎年、『BOOK展』(ギャラリーウシン)に絵画作品やポストカードを出品。