WEB版 Sweet Harmony展(2/3)

文・田村理江   絵・小野寺美樹

お菓子の家

名の知れた和菓子屋に生まれた一人息子だから、ケイトは店を継ぐことを期待されて育った。思春期の激しい反発を経て、それなりの製菓学校へ進んだ頃には、和菓子への愛も少しは芽生えていた。

物心つかないうちに母をなくしたケイトは、折に触れ、母を知る従業員たちから、
「あなたのお母様は、本当に和菓子がお好きでしたね」
と、聞かされ、顔も知らない母を喜ばせたい気持ちも、どこかにあったのかもしれない。

粉を練る技、形を造るセンス、商品化する能力まで持ち合わせていたケイトは、ネオ和菓子と呼ばれる、宝石のようなお菓子を生み出して、店をさらに発展させた。
何もかも順調に進んだ。父が引退して、ケイトが社長になり、働き者の妻を迎え、娘と息子が生まれた。

40歳を目前にした朝、新しい和菓子の材料を調達するため、ケイトは自ら車を飛ばして、里山を目指した。そこの畑で採れる豆が、どうしても欲しかった。

田村理江 について

(たむら りえ)東京都生まれ 成蹊大学文学部日本文学科卒業。日本児童文学者協会第15期文学学校を終了。 第6回福島正実記念SF童話賞を受賞して、『ガールフレンドは宇宙魔女』(岩崎書店)を出版。 児童書の作品に『リトル・ダンサー』(国土社)、『夜の学校』(文研出版)、『魔の森はすぐそこに・・・』(偕成社)など。絵本の作品に『ふなのりたんていラッタさん』(フレーベル館)、『ハンカチのぼうけん』(すずき出版)など。 HP:田村理江のページ

小野寺美樹 について

(おのでら みき)1995年千葉県生まれ。学習院大学経済学部経済学科を2017年の春卒業して、出版社勤務予定。2012年春から毎年、『BOOK展』(ギャラリーウシン)に絵画作品やポストカードを出品。