穏やかな毎日が過ぎるモモの町に、最近、灰色の帽子に灰色の服、灰色の書類かばん、灰色の葉巻をふかした男たちが出没するようになった。
彼らは「時間貯蔵銀行のセールスマン」と名乗り、町の人たちに「時間の預け入れ」を持ち掛けた。灰色の男たちの口車に乗った町の人たちは、言われるがままに時間を預け、そのために毎日が忙しく、イライラしたものに変っていった。
町自体も見る見る、合理的で無機質で味気ないものになっていった。この異常事態に気づいたモモは、「時間が盗まれている! 取り戻さなきゃ!」と、ベッポやジジや子どもたちと一緒に立ち上がる。
ところが、灰色の男たちも負けてはいない。モモをつかまえようと計画を練る。ベッポもジジも子どもたちも灰色の男たちの手に落ち、モモの味方が誰もいなくなる。
そこに現れたのが、甲羅に文字を浮かべる不思議なカメ。モモはカメに導かれ、時間を司るマイスター・ホラの家へと招かれる。ホラと協力して、モモはたった一人で、灰色の男たちと戦い、最後には、みんなの時間を無事に取り戻す。
ファンタジーの名作『モモ』は、1986年に映画化、エンデ自身も出演している。(1973年 ドイツで刊行)