『モモ』アナザーストーリー 作・田村理江
ぞうさん滑り台は、名前の通り、ぞうをかたどった遊具で、いつの頃からか、その下におさげ髪の小さな女の子が住みついていました。小さいといっても、夜を怖がるほど幼くはなく、昼を退屈に過ごすほど大人でもない年ごろという意味です。
女の子のもとへは、たまにお客がたずねて来て、「カード」を道具に遊びます。
今日のお客は学生服の少年で、「3年分のカード、欲しいんだ」と、真面目な声で言いました。
「あいよ」
おさげを揺らし、女の子は少年の前に立つと、ポケットから画用紙で作ったカードを取り出し、そこにクレヨンで「3」と書きました。
「ありがとう。これをじいちゃんに渡したら3年寿命が延びる。ぼくが、じいちゃんと同じ大学に合格する姿をきっと見せられる」
少年は喜んで病院へ向かいました。
女の子の住む滑り台の天井には、カードがびっしり貼られています。
カードを買う人もいれば、売りに来る人もいます。
カードを盗まれないように、女の子はいつも真剣な顔で見張っています。