正直な王様ハンス(1/3)

文・伊藤由美   絵・伊藤 耀

むかし、とても美しくて、とてもぜいたくな王妃さまがいました。
王妃さまは、1日、3着のドレスと3足のくつを作りました。それぞれのドレスを飾るのは虹色の真珠と色とりどりの宝石。くつときたら、ピッカピカの金でできていました。
お城には、毎晩、おおぜいのお客が招かれ、真っ白なテーブルクロスに銀の食器で、香ばしい肉だの、新鮮な魚だの、果物だの、たいそうなごちそうをたらふく食べました。それから、楽士たちの愉快な音楽に合わせて、キラキラのシャンデリアの下で、夜がふけるまで踊るのでした。

王さまは、美しい王妃さまのために、どんなぜいたくな願いもかなえてやりました。それにはたくさんのお金が必要です。そこで、王さまは、国の人々に、とても高い税金をかけました。それでも足りないので、戦争に出かけては、まわりの国々から財宝を奪い取りました。まわりの国々にしてみたら、大そうな迷惑です。

そんな王さまと王妃さまには、長い間、子供がいませんでしたが、ある年、とうとう、玉のように可愛い女の子が生まれました。アウロラと名付けられた王女さまは、たくさんの召使いにかしずかれて、何不自由なく、すくすくと育って行きました。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに