“海”をどう描くか

『みんなが やさしく なりますように』の制作を振り返って

昨年(2016年)12月に絵本『みんなが やさしく なりますように』(みたむらよしはる・作)を出版しました。
この絵本は、水族館に行った姉妹が、不思議な海の世界に入りこみ、海の生き物や、謎の怪物に出会うお話です。

なんと、お話に登場する姉妹は、私の娘たち。著者の三田村さんとは、童話サークルで何度かお会いしていたのですが、二人の娘を連れて行った際、いつか、娘たちのお話をつくりたいと思ってくださったそうです。
そんな絵本の中で、私にとって印象的なページがあります。

「わたしたちは おかあさんから うまれたよ」
「うみって、さかなたちの おかあさん みたいだね!」

姉妹の、こんな言葉がでてくる1ページです。
三田村さんのお話です。
「フランス語で、“海”は la mère(ラ・メル)、“母”も la mer(ラ・メル)という。海では、たくさんの生き物が生まれ、育つ。海は母のような存在だ」

母なる海を大切にし、守っていきたい、という三田村さんの想いが、この1ページに込められていると感じました。同時に、三田村さんの想いを、絵で表現できたら、と強く思いました。

しかし、普段は、“踊っている 変なおじさん”の絵なんかを描いている私。そんな私に、“母なる海”が表現できるのか?という不安もありました。
考えた末、机の奥からひっぱりだしのは、アクリル絵の具。
アクリル絵の具は、何度も色を重ねて塗ることが出来るので、海の深さや、海の多様な表情を描くのにいいのではないかと思ったのです。

暖かく包み込み、育んでいく、まるで、お母さんのお腹の中のような海。サカナ、タコ、クラゲ、イソギンチャク、海で育つ様々な生き物たちの姿を、一筆一筆、塗り重ねていきました。私のお腹の中に、娘たちがいた記憶を、ふと思い出しながら。

中野 愛久美 について

中野愛久美(なかの めぐみ)佐賀県生まれ。有田工業高等学校デザイン科にて、初めて絵本創作を学び、絵本づくりの楽しさに魅了される。現在は、二人の娘を持つ母であり、子育てをしながら絵本の創作に励んでいる。東京デザイナー学院グラフフィックデザイン科卒業。日本児童文芸家協会研究会員。 おおしま国際手づくり絵本コンクール入選、ピンポイント絵本コンペ三次選考通過、graniphTシャツデザインアワード銅賞など、絵本やイラストのコンペ、その他グループ展などに積極的に出展している。 PuFuFu