がめ島うらしま館(8/14)

文・伊藤由美   絵・伊藤耀

「今のうちだよ、大ちゃん!」
大介は、あらん限りの力でおよぎ上がります。
竜はたけりくるって、人魚たちをしっぽでなぎはらい、きばでかみ殺していきます。
「人魚、もっと、出て!」
死んで、木の葉のように、ひらひら、しずんでいく人魚たちがかわいそうだとは思いながらも、美里は指がいたくなるほど、タブレットの画面をたたき続けました。


「だめや、みーちゃん、あいつ、強すぎ。追いつかれる!」
「ああ、残っているのは酒だるだけ」
いのるような気持ちで、美里が酒だるのアイコンをタップすると、竜の頭上に酒だるが現れ、バチンと割れて、青色のものが水中に広がりました。
それが竜の顔にかかると、とたんに、竜はおとなしくなり、くねくねと、体をゆらし始めました。

「よっぱらっている。今のうちににげて!」
美里は受付のタブレットをスタンドからはずし、それを持って通路をかけぬけ、水そうのガラスにはりつきました。
じきに、美里の見えるところまで大介がおよぎ上がってきました。
ところが、ふらふらしながらも、竜がなおも追いかけてきて、大介の足にくいつこうとしました。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井県福井市在住。 『指輪物語』大好きのトールキアン。その上にトレッキー(「スター・トレック」ファン)でシャーロキアン(「シャーロック・ホームズ」ファン)と、世界3大オタクをカバーしている。

伊藤耀 について

(いとう ひかる)1992年福井県福井市生まれ。仁愛大学人間学部心理学科卒。いつもはウサギばかり描いているが、ときどき、母親の童話に挿絵を描いている。福井市在住。創作工房伽藍で勉強中。