つなぐ(3/10)

文・藤 紫子  

「まもなく、時音(ときね)、時音、お出口は左がわ、二番ホームに着きます。お乗りかえのごあんないを・・・」
ふっと、車内放送が耳に飛びこんできました。
現実にもどりました。
もうすぐ降りる駅です。
おじいさんは、ふうとため息をついてから、席を立ちました。

駅を出ると、おとなりのビルにある花屋に寄りました。
「いらっしゃいませ。あっ、こんにちは! 今月もいらしてくださったのですね。花束、急いでお作りします。おかけになっていらしてくださいね」

おじいさんはひと月に一回、何年もこのお店に通っています。
おじいさんが入っただけで、お店の人は花束を作ってくれます。

藤 紫子 について

(ふじのゆかりこ) 札幌市生まれ。札幌市在住。季節風会員。小樽絵本・児童文学研究センター正会員。12年ほど町の図書館員をしていました。子ども向けのお話と好き勝手な詩(https://ameblo.jp/savetheearthgardian/entry-12601778794.html)を書いています。自然・ドライブ・博物館・棟方志功氏の作品・源氏物語・本(本なら問題集でも!)が好き。