エルとくるみとソラ(1/7)

文・七ツ樹七香  

「くるみちゃん! 見て、うちの子! かわいいでしょう? いまから散歩に行くんだ」
習い事に行くとちゅう、公園のわきを歩いていたくるみは足を止めた。ブランコのそばで大きく手をふっていたのは、ゆいと孝太(こうた)だ。
くるみと同じクラスの友だちだった。

その足元に、みかけない犬が1ぴきいる。まだ子犬のようだった。
ふたりはくるみの元に走ってくる。もちろん犬もいっしょだ。

くるみはまゆをよせて、キッパリと言った。
「わたし、犬はキライだから、近づけないで!」
かけてきたゆいと孝太は、おどろいて立ち止まる。

いっしょに走ってきたたれ耳でどう長の子犬は、くるみを見てうれしそうにしっぽをふっていたが、ゆいはあわててリードを引っぱると、自分のところに子犬をひきよせた。
くるみはいやそうに、ふいっと顔をそむける。ゆいはずいぶんこまった顔をしていた。

「えっ、でも、くるみちゃん、犬のこと・・・」
「へえ、くるみは犬キライなんだ。犬ってさ、かわいいよ? オレの家も、いま犬を飼(か)う相談してるから、ゆいのとこの子犬、見にきたんだ。くるみも、ちょっとなでてみたらいいのに。いまから、ゆいのお母さんといっしょに犬の散歩に行くんだけど、くるみもどう?」

七ツ樹七香 について

(ななつきななか)熊本県在住 会社員勤務を経てフリーライター・(アマチュア)作家 新紀元社WEBサイト パンタポルタで記事・コラムを執筆するかたわら、WEBで小説を発表。公募活動にも力を入れる。『ピイのとんだ空』で日本動物児童文学賞 優秀賞。熊本県民文芸賞では小説部門を二年連続受賞。本賞で2019年に第1席を獲得した『ラスト・オテモヤン』は熊本日日新聞に全10回連載され好評を博す。本作は作品集収録とともに朗読CD化、熊本県内数カ所の図書館で視聴可能。 ほか、西の正倉院 みさと文学賞 佳作、集英社WEBマガジンコバルト がんばるorがんばらない女性小説賞 大賞など。 児童文学から一般文芸まではば広く手がけている。動物が大好き。犬と小鳥と暮らしている。著書を持つのが夢。