エルとくるみとソラ(7/7)

文・七ツ樹七香  

「あっ、あー! それ! ソラにそっくり!」
孝太は絵を指差して大きな声で言った。
くるみ、ゆい、孝太の三人は学校で「芸術の秋」という宿題を見せ合っていた。みんな好きに絵をかいて持ってきなさいという宿題だ。
ゆいはクリとぶどうの写生、孝太は真っ赤なもみじをダイナミックにえがいたものを持ってきていた。

くるみの絵が上手いことはみんな知っているので、最後に見せることになっていたのだ。
「え、孝太はソラを知ってるの? この子、本当にソラっていうの。うちの新しい家族」

花開いたキンモクセイとローズマリーのある庭の風景。そして秋らしい真っ青な空のえがかれたくるみの絵はやはりだれよりも上手だった。そして、その絵には大きな犬が一頭かかれていた。そばには水色のゴムボールもある。

「あ! やっぱり。里親をぼしゅうしてたときに、うちも希望してたんだよ。その時は元の飼い主さんの知り合いのところに、トライアルに行ってるって聞いてた。そこでダメだったらうちにも来る予定でさ。あれ、くるみの家だったのか。くっそー! いいなぁ」
「うん、ごめんね。ソラは、うちの子になったから」

七ツ樹七香 について

(ななつきななか)熊本県在住 会社員勤務を経てフリーライター・(アマチュア)作家 新紀元社WEBサイト パンタポルタで記事・コラムを執筆するかたわら、WEBで小説を発表。公募活動にも力を入れる。『ピイのとんだ空』で日本動物児童文学賞 優秀賞。熊本県民文芸賞では小説部門を二年連続受賞。本賞で2019年に第1席を獲得した『ラスト・オテモヤン』は熊本日日新聞に全10回連載され好評を博す。本作は作品集収録とともに朗読CD化、熊本県内数カ所の図書館で視聴可能。 ほか、西の正倉院 みさと文学賞 佳作、集英社WEBマガジンコバルト がんばるorがんばらない女性小説賞 大賞など。 児童文学から一般文芸まではば広く手がけている。動物が大好き。犬と小鳥と暮らしている。著書を持つのが夢。