ピイの飛んだ空(8/8)

文・七ツ樹七香   絵・久遠あかり

ピイ、ピイ、ピイ――。

ハッとした。それは間ちがえようもないほどに、聞き知った声だった。黒々とした木々の合間から鳴き声が聞こえるのだ。

「ピイ! いるのか! 帰ってこい」
よびかけるとすんだ声が返ってきた。
確信を持った。あれは、絶対にピイだ。

秋斗(あきと)を追いかけて来たお母さんがかたに手をかける。
「秋斗、残念だけどもうすぐ夜だしムリだよ。家に――」
「お母さん、あの声、ピイだよ! エサ、ほしがってる」
「そっか。秋斗にはわかるのか・・・。けど、一度外に出た鳥はむずかしいな。明日一日は、目立つところにエサを置いてみようか。まだ巣立つには、ちょっと早すぎる日数だと思うから。もどってこれるといいけど」

その日の秋斗は生きた心地がしなかった。父のなぐさめにもうなだれたまま、タオルケットをかぶって真っ暗な部屋の中で、ただピイの無事だけをいのった。
寒くないだろうか。夜行性の肉食の生き物にやられたりしないだろうか。
まんじりともしないまま夜が明けると、秋斗は一目散に庭のウッドデッキにかけ出した。
「ピイ!」
うらの林に向けて、よびかけた時だった。

七ツ樹七香 について

(ななつきななか)熊本県在住 会社員勤務を経てフリーライター・(アマチュア)作家 新紀元社WEBサイト パンタポルタで記事・コラムを執筆するかたわら、WEBで小説を発表。公募活動にも力を入れる。『ピイのとんだ空』で日本動物児童文学賞 優秀賞。熊本県民文芸賞では小説部門を二年連続受賞。本賞で2019年に第1席を獲得した『ラスト・オテモヤン』は熊本日日新聞に全10回連載され好評を博す。本作は作品集収録とともに朗読CD化、熊本県内数カ所の図書館で視聴可能。 ほか、西の正倉院 みさと文学賞 佳作、集英社WEBマガジンコバルト がんばるorがんばらない女性小説賞 大賞など。 児童文学から一般文芸まではば広く手がけている。動物が大好き。犬と小鳥と暮らしている。著書を持つのが夢。

久遠あかり について

(くどうあかり) 漫画家。主に児童向け、動物のお話を執筆。ハリネズミや犬を飼い自然と動物好きに。現在は保護猫と暮らしている。また、別名義(光晴ねね)で少女漫画やロマンスジャンルなどで活動中。 pixiv fanbox 光晴ねね https://nene-mitsuharu.fanbox.cc/