ペンギンのアディ(8/10)

文・伊藤由美  

「あれかしら」
ようやく、ひときわ赤い星を見つけたアディは、足下に、スクアノタカラを、ぺぺっと、はき出しました。
それから、「ええと、じゅ文は・・」と、考えますが、すっかり、かじかんでいて、トウゾクカモメ語どころか、まずは、ペンギンの声が出ません。

「ク・・・クェー・・・」
悪いことに、空に緑色の光が現れ、ゆれはじめました。
「オーロラたちのダンスが始まっちゃった! 急がなくちゃ!」
ククククェー、グェー、ゲー!
いっしょうけんめい、体をふるわせて、やっと、ペンギンの声が出ました。
いよいよ、トウゾクカモメ語のじゅ文です。

「モ、モ、モルテンの、な、名にかけて、ギャッギャギャギャッギャギャー!」
残念、ちがいます。もちろん、何も起こりません。
「ンギャッギャ、ギャーギャー」
緑の光は、はばを広げながら、ゆらゆらと、長く、のびて行き、ヒラヒラ、ヒューヒュー、たなびきます。まるで、天の高いところで、強い風がふいているかのように。
そのくせ、しんとして、まったく、何も聞こえないのです。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井県福井市在住。 『指輪物語』大好きのトールキアン。その上にトレッキー(「スター・トレック」ファン)でシャーロキアン(「シャーロック・ホームズ」ファン)と、世界3大オタクをカバーしている。