正直な王様ハンス(1/3)

文・伊藤由美   絵・伊藤 耀

困ったのは大臣たちでした。何しろ、たった1日のうちに、国王と王妃が消えてしまったのですから。
「これを知れば、まわりの国ぐにが、すぐにも、戦争をしかけてこよう。急いで、何か、手を打たねばならぬぞ」
「こうなれば、アウロラさまにお婿さまを迎えてもらうしか、あるまい」

さっそく、大臣たちは、塔の部屋にアウロラを訪ねました。
「アウロラさま、どうか、そっこく、お婿さまをお選びください。この国を任せられる、すぐれた国王が、今すぐ、必要なのです。どのお方になさいますか」
アウロラは14歳になっていましたが、それよりは、ずっと、あどけなく見えました。そして、とつぜん、両親を失って、つぶらな目を涙でいっぱいにしていました。
それなのに、大臣たちは、年頃の王子さまたちの姿絵を、つぎつぎに、アウロラに見せました。
「いやです。いや、いや」
アウロラが首を振るので、大臣たちは、ずいぶんと若い王子さまや、ひどく年寄りの王子さまの姿絵までも見せて、アウロラにつめよりました。
とうとう、アウロラは、顔をしかめて言いました。
「私のお婿さまは、もう、決まっています。そのお方は、この塔の窓から見える、あの若者です」
「何ですと」
大臣たちは、すっかり、めんくらってしまいました。
そこに見えていたのは、麻袋から種をつかんで畑にまいている、農夫の息子だったからです。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井県福井市在住。 『指輪物語』大好きのトールキアン。その上にトレッキー(「スター・トレック」ファン)でシャーロキアン(「シャーロック・ホームズ」ファン)と、世界3大オタクをカバーしている。

伊藤耀 について

(いとう ひかる)1992年福井県福井市生まれ。仁愛大学人間学部心理学科卒。いつもはウサギばかり描いているが、ときどき、母親の童話に挿絵を描いている。福井市在住。創作工房伽藍で勉強中。