「真似て遊ぶ」から「自分らしく」

あるあさ、ぼくは・・・

マリー・ホール・エッツ 作
まさき るりこ 訳
好学社
2022年4月21日刊

絵本「あるあさ、ぼくは・・・」の表紙

◆いろんな生き物たちの姿を真似ていく少年

マリー・ホール・エッツといえば、『もりのなか』などたくさんの人気絵本を生み出した絵本作家として有名。
今回は翻訳し直され再出版された作品をご紹介します。

ある朝、主人公の少年は、物置小屋の杭にとまって歌を歌っている小鳥を見つけます。
そこへ少年の飼っている猫のビディーがやってきて、その小鳥を捕まえようと襲いかかります。
その瞬間、それを止めようと少年は手を叩いて小鳥を逃がしてあげます。

猫のビディーは腹を立てましたが、また次の獲物を探しに草の中へ戻っていきます。
少年はその歩く様子を真似してついていきます。
向かった先には、雄鶏のコッキィがいました。

「コッキィ、ぼく、ことりみたいには とべないけど、ねこみたいにならあるけるし、おんどりみたいにだって あるけるよ」
少年はそう言うと、コッキィの歩く姿をそっくり真似て再び歩き始めました。
すると・・・

このようにして物語は、出会っていくいろんな生き物たちの姿を真似ていく様子が繰り返し展開されていきます。
家の農場にいる豚や馬、牛から、森の中にいるいろんな生き物たちまで、その姿や形、習性はさまざまです。

少年はそれをいとも簡単に真似て「僕はどんな生き物にでもなれる!」と自慢気な様子です。
「真似て遊ぶ」というのは子どもならではの発想でとても愛らしく、その時の少年の楽しそうな様子は読者の心に共感を誘います。

最後に池の前でボート出そうとしているお父さんを見つけ、少年は声をかけるのですが、お父さんは少年の呼び声に気づきません。
一体なぜでしょう?
そこで少年は初めて・・・(次ページに続く)

えもり なな について

江森 奈々(えもり なな)1985年神奈川県生まれ。千葉県在住。幼少期より母から良質な絵本を与えられて育つ。幼い頃から絵を描くことが得意で、小学生の頃は漫画を描く。中学生になると美術部に所属し油絵を始める。灰谷健次郎の「兎の目」に感銘を受け、10代は日本や世界の児童文学を読みふける。現在、保育士をしながら絵本や童話、紙芝居の創作、読み聞かせを行っている。画家・イラストレーター、モデルとしても活躍中。絵本は1500冊以上読破。2023年be京都にて初のプチ個展を開催。パレットクラブスクール19期絵本コース卒業。トムズボックス2019冬季ワークショップ修了。 『絵本作家になるには、絵が描けないと無理ですか』(CATパブリッシング)の挿絵を一部担当。 著書に『おへそはなにしてる?』(クリエイターズ絵本「YOMO」) ●YouTube:【なないろ本屋/7's BOOKSHELF】 ●Instagram:【nana_museum】