◆自分らしく生きることへの大切さ
この絵本の解釈はさまざまあると思いますが、私はこのストーリーを通して少年の一つの成長過程、通過儀礼を見ているような感覚になりました。
少年は遊びの一つとして他の生き物たちの姿をそっくりそのまま真似ることを覚え、得意になって楽しんでいます。
でも、どんなに真似ることが上手になっても少年はやっぱり人間なんですね。他の生き物たちと同じにはなれない。
最後の父を見つけた場面で少年が取る行動はまさにそれを象徴するシーンとなっています。
子どもは成長の過程で周囲のいろんなものを真似ることから学習していきます。
でも、最終的に本当の自分でないと周囲はその人をのこと本当の意味でわからない、どんなに身近な存在であっても、いつもそばにいたとしても見えていないのと一緒だという感覚になります。
昨今「自分らしく」というテーマが大切だと語られるようになってきていますが、この絵本には作者の「自分らしく生きることへの大切さ」が込められているように私には感じられました。
また、ラストの展開は、読者が何を受け取るのかを委ねるような深い余韻が残されていて、明確な結末、答えを提示していないのもまた不思議と魅力的な作品です。
マリー・ホール・エッツの版画で描かれる絵は印象的で、生き物の愛らしい姿や、少年を見つめるやさしい眼差しもまた注目してほしい点です。
彼女がどれだけ深く動物たちを愛していたのかが伝わってきます。
この絵本を通して何を受け取るかは自由です。「自分は何を感じるのかな?」それに気づくこともまた「自分らしく」に繋がっています。
そんな素晴らしい絵本体験をぜひ味わってみてくださいね。