いえいえ、おばけじゃありません(2/4)

文と絵・ひなたのんき

「パパ・・・。このおばけ、しりあい?」
ぼくがきいたら、おばあさんのおばけは、かおと同じ青白い手で、口をかくして、オ~ホ~ホ~とわらった。

「いえいえ、おばけじゃありません。この、りょかんのものですよ。よろしくねぇ」
おばあさんは、ぼくに、ニタリとわらいかけてから、
「おしょくじは、さきになさいますか。おふろのあとになさいますか」
と、パパにきいた。

「さきに、おふろにはいります。ごはんのまえに、あせをながしたいので」
「さようですか。かしこまりました。では、おへやに、ごあんないしましょうねぇ」
ゆかを、ギッシギッシへこませながら、おばあさんが、暗いろうかのおくへと、歩き出した。

「ほら、どうした。行くぞ」
立ったまま、うごけないぼくのせなかを、パパがポンとおした。

ひなたのんき について

東京都出身です。空と、水のある景色と、物語の世界が大好きです。 絵は描けないけど絵本が描きたいので、絵本の文章を編集さんに見てもらったりしています。 好きな絵本作家は、かがくいひろしさん、長谷川義史さん。 好きな童話は、寺村輝夫さんの「ぞうのたまごのたまごやき」、「こまったさんのオムレツ」。 好きな物語の出だしは、安房直子さん作「きつねの夕食会」の「新しいコーヒーセットを買ったので、きつねの女の子は、お客をよんでみたくてたまりませんでした」。 こんな風に人に衝撃を走らせる一文を、自分もかきたいと思います。