いえいえ、おばけじゃありません(4/4)

文と絵・ひなたのんき

おふろからあがって、ぼくたちは、へやで、ごはんをまっていた。
すると、ふすまが、音もなく、ス~~~ッ・・・。

「おばけじゃ、ないんだよね?」
ぼくは、おそるおそるきいた。
「はい、おばけじゃありません。おしょくじを、おもちしました・・・」

やせこけて、青白いかおをした、女の人が、ぼくの方を見て言った。
まっかなくちびるをつりあげて、ニマァッとわらいかけてくれた。

「な~んだ。おばけなんて、いないじゃない。こわがって、ソンしちゃったよ」
おなかもいっぱいになって、ぼくは、おふとんでゴロゴロしながら言った。
さいしょのおばあさんも、おふろのおじいさんも、さっきの女の人も、おばけじゃなかった。
そりゃ、みんな、ぶきみだけど、でも、ただの、りょかんの人たちだ。

「だろ?  おばけなんて、いないのさ。ただの、うわさだよ」
パパが、がっはっはとわらった。

ひなたのんき について

東京都出身です。空と、水のある景色と、物語の世界が大好きです。 絵は描けないけど絵本が描きたいので、絵本の文章を編集さんに見てもらったりしています。 好きな絵本作家は、かがくいひろしさん、長谷川義史さん。 好きな童話は、寺村輝夫さんの「ぞうのたまごのたまごやき」、「こまったさんのオムレツ」。 好きな物語の出だしは、安房直子さん作「きつねの夕食会」の「新しいコーヒーセットを買ったので、きつねの女の子は、お客をよんでみたくてたまりませんでした」。 こんな風に人に衝撃を走らせる一文を、自分もかきたいと思います。