「こんなおそろしい歯、もういらない」
いっそぬいてしまおうかと思いました。
けれど、自分でペンチで歯をひっこぬくことを考えたら、たまらなくおそろしくなって、とうとうポロポロ涙をこぼして泣き出してしまいました。
しばらくそんなフミヤを見ていたネズミが、気のどくに思ったのか、おくの暗がりに向かって「おーい」とだれかをよびました。
あらわれたのは、ブチでした。
「おまえ、この子の歯を持っていったやつ見てないかい?」
「見たよ」
ブチがふつうに答えたので、フミヤはびっくりして、涙も止まってしまいました。
ネズミがしゃべるのだから、ブチもしゃべってもふしぎではなかったのですが。
ネズミが「教えてやりな」というと、ブチはめんどくさそうにうなずいて言いました。
「ついてきな」