おしょうさんはかっぱに、いいものを見せてやろうと言って、寺までつれてきました。
「なんだ、いいものって?」
「あれよ、ほとけさまじゃ。じっとお前さんを、見ていなさるぞ」
「どうしておいらを、見ていなさる?」
「わるさをするから、おこってらっしゃるのだよ」
ほとけさまを見ればかっぱはこわがり、わるさをしなくなると考えたのです。
かっぱはほとけさまの近くまで行って、じっと顔を見つめます。
「おしょう、このほとけはおこってなどないぞ。やさしい顔で、おいらを見ていなさる」
「やさしい顔で、おこっておられるのだ。お前さんには、それがわからぬか?」
「わからぬ!」
ほとけさまはだれにでも、やさしくほほえみかけるのでした。
だからこわい顔でなければ、かっぱにはわからないのです。