おしょうさんとかっぱ(4/5)

文・雪乃 椿  

「おう、だれかおるぞ」
井戸の水はとてもきれいだから、自分の顔がうつっているのです。
「おーい!」
自分とはと知らずに、よびかけます。
するとどうでしょう、井戸の中でかっぱの声は、“うぉーん!”とおそろしくひびきました。

「おしょう、聞いたか? なんて、おそろしい声だ」
「あぁ、聞いたとも。あのものが、井戸の中でおこっておるぞ」
よほどその声がこわかったのか、かっぱはふるえだしました。

 

 

 

 

 

雪乃 椿 について

(ゆきの つばき) 京都市に生まれ現在も在住。英知大学イスパニア語イスパニア文学科卒業後、京都大学医学部附属病院で医局秘書として勤務。物の怪、陰陽師、仏像が大好きで、いつか平安時代の大スペクタクル児童文学を書いてみたいと思っています。