おしょうさんとかっぱ(5/5)

文・雪乃 椿  

こんどは、やさしく話しました。
「おっとさんが、なぜおこってなさるか、わかるか?」
「わからんよ」
「それは、わるさをしたからじゃよ。」
「でも、わるさはたのしいぞ」
「いくらたのしくとも、まわりにめいわくをかけてはならん。たのしいのはお前さんだけで、村人はこまっておる」

泣きやんだかっぱは、おしょうさんにたずねました。
「村人をこまらせたから、おいらおこられたんだな?」
「そうじゃよ」
「わかった、もうこまらせない。でもまた、悪さをしたくなったら、どうしたらよい?」

かっぱの皿をなでながら、おしょうさんは答えます。
「この井戸の中をのぞいて、またおっとさんに会いにこい。そうしたら、わるさをしたくなくなるぞ」
「そうするよ、ありがとう」
おしょうさんにお礼を言うと、かっぱは帰っていきました。

雪乃 椿 について

(ゆきの つばき) 京都市に生まれ現在も在住。英知大学イスパニア語イスパニア文学科卒業後、京都大学医学部附属病院で医局秘書として勤務。物の怪、陰陽師、仏像が大好きで、いつか平安時代の大スペクタクル児童文学を書いてみたいと思っています。