がめ島うらしま館(10/14)

文・伊藤由美   絵・伊藤耀

10 春の部屋、夏の部屋

次の瞬間、大介がいたのは木の枝をあんでできた簡単な小屋の中でした。
大小のびくやあみ、つりざおなどが並んでいます。
「なんや、漁師小屋みたいやな」
小屋のとびらをおし開けて、おそるおそる外へ出てみると、うららかな日ざしの下に梅の花が、いっぱい、咲いていました。

ケッキョケッキョと鳴いているのはうぐいすでしょうか。
「たそ!」
「え?」
ふりかえると、すごく昔風の着物を着た女の人が立っていました。
「たそ? わが子太郎の小屋にて何するらむ?」
「はあ? わが子太郎って言った? ひょっとして、おばさん、浦島太郎のお母さん?」
「いかにも、太郎はわが子なるが、ぬしは太郎の知りびとか?」
「おばさんの言葉、分かりにくいなあ」
その時、大介の持っていたタブレットがピカンと光って、4つ目の問題が現れました。

「『第4問、浦島太郎のお母さんの名前は何でしょう?』 わお、答え、目の前じゃ! すみません、おばさんの名前、何ていうんですか?」
女の人は、みるみる、こわい顔になりました。
「その板は何ぞ! あやしげに光るなり! まして、われに名乗れとは、ぬしはさだめて小鬼なるべし! たれぞ!」
女の人のさけび声に、すぐさま、よろいすがたの男が、ふたり走ってきました。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに