10 春の部屋、夏の部屋
次の瞬間、大介がいたのは木の枝をあんでできた簡単な小屋の中でした。
大小のびくやあみ、つりざおなどが並んでいます。
「なんや、漁師小屋みたいやな」
小屋のとびらをおし開けて、おそるおそる外へ出てみると、うららかな日ざしの下に梅の花が、いっぱい、咲いていました。
ケッキョケッキョと鳴いているのはうぐいすでしょうか。
「たそ!」
「え?」
ふりかえると、すごく昔風の着物を着た女の人が立っていました。
「たそ? わが子太郎の小屋にて何するらむ?」
「はあ? わが子太郎って言った? ひょっとして、おばさん、浦島太郎のお母さん?」
「いかにも、太郎はわが子なるが、ぬしは太郎の知りびとか?」
「おばさんの言葉、分かりにくいなあ」
その時、大介の持っていたタブレットがピカンと光って、4つ目の問題が現れました。
「『第4問、浦島太郎のお母さんの名前は何でしょう?』 わお、答え、目の前じゃ! すみません、おばさんの名前、何ていうんですか?」
女の人は、みるみる、こわい顔になりました。
「その板は何ぞ! あやしげに光るなり! まして、われに名乗れとは、ぬしはさだめて小鬼なるべし! たれぞ!」
女の人のさけび声に、すぐさま、よろいすがたの男が、ふたり走ってきました。