そのころ、大介は真冬の海辺にいました。
「うう、はんぱなく寒い」
ぶるぶる、ふるえながらタブレットを見ると、ピカンと、第7問。
「『玉手箱を開けた浦島太郎はどうなったでしょう?』 何や、こんなこと、ここに来なくたって分かるやない!」
「おじいさんになった」と答えようとして、大介は、ぐっと、こらえました。
(わざわざ、こんな簡単な問題、出すやろか、あの意地悪な鶴島かめ代が?)
またペナルティになったら大変です。
大介はふるえる体を手でこすり、足ぶみしながら、何かヒントはないかと、注意深く、辺りを見回しました。
空は暗く、雪がちらつき、波の花があわのように飛んできます。
あちこち、打ち上げられた流木や海そうで、ごみの山ができています。
「あ、あれは!」
向こうから、とぼとぼ、歩いてくる人がいました。
おなじみのポニーテールにこしみのスタイル。その上、箱のようなものをかかえています。
大介は、とっさに、流木の後ろにねころんで、小さい流木になりきりました。
(帰ってみればこわいかに! 浦島太郎、これから、玉手箱を開けるつもりなんや。ここで見ててやろう!)
砂の冷たさは、じんじん、痛いほどでしたが、じっとがまんしていると、太郎は大介のすぐそばまで来て立ち止まり、海を見て、ため息をつきました。