がめ島うらしま館(12/14)

文・伊藤由美   絵・伊藤耀

「おやまあ、私がうたたねしている間に、ひみつの相談かい? だが、残念だったね。時間切れだよ。見てごらん。竜宮時計が動き始めてしまった」
確かに、タブレットの中で、さっきまで止まっていた竜宮時計が、カチカチと、時を刻み始めていました。
その横では、陸(おか)時計の針がものすごい速さで、クルクル、回っています。

「これからお前たちは私といっしょに、深い深い海の底、竜宮へ下りていくんだ。そこで、ゆっくり、年を取るんだよ。陸の連中は、その間に、クルクル、コマが回るように、早く年を取って死んでしまうから、もう、会うことはあるまいよ。ひっひっひ」
「おい、かめ代!」
大介がどなりました。
「おまえ、最後の問題、捨てるんか? 太郎とおとひめ、見つけたくないんか? おれたちに、あと1時間、くれたら、見つけてやるぞ」
「なんだって!」
かめ代の目がきらりと光りました。
「私が1500年も探したあの2人を、おまえは本当に連れてこれるのかい?」
ドスンと、ものすごい地ひびきがして、もう一度、野太い声が言いました。
「本当かい? うそだったら承知しないよ!」
ふり返ると、「四季の部屋」ホールいっぱいに、恐竜のような巨大ウミガメが、目をギラギラさせて、二人を見下ろしていました。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに