がめ島うらしま館(12/14)

文・伊藤由美   絵・伊藤耀

ウミガメは言いました。
「あいつらのせいで、私がどんなひどい目にあってきたことか! おとひめを失った竜王は『おまえが人間などを連れてきたからだ!』と、私を竜宮から追放してしまった」
おとひめを見つけなければ、二度と竜宮へもどれないカメは、がめ島にひそみ、人間の世界にまぎれているおとひめを探し続けてきたのでした。
「だが、それも今日が最後。あきらめて、お前たちを手土産に、竜王にわびに帰るつもりなのだ」
大介は足をふんばり、むねをそらして、カメに向き合いました。

「うそやない。おれたちをここから出してくたら、必ず、太郎とおとひめを連れてきてやる」
「だいちゃん!」
美里は大介のうでを引きました。
が、大介は、
「まかせて。おれ、この2人、知ってるんや」
と、自分のタブレットを見せました。

そこには消えた7枚のパネルの代わりに、美しい少女と漁師の青年とが並んで写っていました。
「よろしい。では、あと30分、やろう。ただし、新一は置いて行くのだ。おまえたちが2人を連れてきたら、新一も返してやろう。そしたら、私はにくい太郎を八つざきにして、身勝手なおとひめをみやげに竜宮に帰るのだ!」

次のしゅん間、美里と大介はがめ島の対岸に立っていました。
「あ、あたしのタブレット、消えちゃってる」
「だいじょうぶ。おれ、まだ、持ってる。浩一のところへ急ごう!」
大介は、太郎とおとひめの写っているタブレットをしっかりかかえ、走り出しました。
「しんちゃん、待ってて」
美里も大介の後を追いました。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに