がめ島うらしま館(13/14)

文・伊藤由美   絵・伊藤耀

13 美波ガラス工芸館

「おれ、冬の部屋で、太郎の玉手箱をのぞいて、分かったんや。あれって、じいさんを作るマシンやない、タイムマシンや!」
「タイムマシン?」
「うん。太郎は未来にタイムスリップしたんや。タイマーは、2010‐07‐07に合わせてあった。ってことは・・・」
「2010年7月7日ってこと? それだと、10年前だよね」

「2人は10年前にここに来てた。おれ、タブレットの太郎とおとひめを、10年、老けさせてみた。そしたら、おれの知っている人たちにそっくりになったんや!」
「それはだれ?」
走りながら、夢中で話していた2人は、どすんと、人とぶつかりました。

とたんに、こつんと、げんこが大介の頭にふってきました。
「いて!」
「ばか、どこに行っていたんや、バケツ、置きっぱなしで。しんちゃんはどこや?」
それは帰りのおそい3人を心配して、探しにきた浩一でした。

「うわーん、にいちゃん、助けてくれ!」
大介は浩一に、ひしっと、しがみついて、泣き出しました。
びっくりして、浩一は美里に目を移しました。
「何があった、美里ちゃん。ちゃんと話してみい」

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに