「ここだ」
トヅカを待たせ、浩一を先頭に、大介、美里がガラス工芸館のとびらを開けると、チロリンと、すずしげに、ガラスのドアベルが鳴りました。
「いらっしゃいませ」と、女の人のきれいな声。
店の中には、海に面して大きな窓があり、たなやテーブルいっぱいに、ガラスの花びんやコップ、アクセサリーなどが並んでいます。
どれも美しい青や水色で、天井の照明と窓からの自然の光で、キラキラ、かがやいていました。
「いらっしゃい、浩一君、大介君。それに、かわいいおじょうさん」
にこにことむかえてくれた女の人を見て、美里は「あっ」と、声を上げました。
「な! そうだろう?」とでも言いたげに、大介が美里に目配せます。
「すみません、美波さん。実は、さっき、弟たちががめ島に閉じこめられて・・・」
浩一が話し出すと、女の人はみるみる青ざめ、奥の工房からも男の人が出てきて、熱心に耳をかたむけました。それは、もちろん、少し老けた浦島太郎でした。