がめ島うらしま館(13/14)

文・伊藤由美   絵・伊藤耀

「ここだ」
トヅカを待たせ、浩一を先頭に、大介、美里がガラス工芸館のとびらを開けると、チロリンと、すずしげに、ガラスのドアベルが鳴りました。
「いらっしゃいませ」と、女の人のきれいな声。

店の中には、海に面して大きな窓があり、たなやテーブルいっぱいに、ガラスの花びんやコップ、アクセサリーなどが並んでいます。
どれも美しい青や水色で、天井の照明と窓からの自然の光で、キラキラ、かがやいていました。

「いらっしゃい、浩一君、大介君。それに、かわいいおじょうさん」
にこにことむかえてくれた女の人を見て、美里は「あっ」と、声を上げました。
「な! そうだろう?」とでも言いたげに、大介が美里に目配せます。

「すみません、美波さん。実は、さっき、弟たちががめ島に閉じこめられて・・・」
浩一が話し出すと、女の人はみるみる青ざめ、奥の工房からも男の人が出てきて、熱心に耳をかたむけました。それは、もちろん、少し老けた浦島太郎でした。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに