がめ島うらしま館(2/14)

文・伊藤由美   絵・伊藤耀

2 海水浴

宮本家で水着に着がえた美里と新一は、大介を先頭に、海水浴場へ向かいました。
3人の後ろを大介の兄、浩一が歩いてきます。
大介は、たびたび、浩一をふり返って、「うざい」とか「ついて来るな」とかと悪態をつきますが、浩一はおこるでもなく、にやにやしながら、少しはなれてついてきました。

(こうちゃん、前より、ずっと、背が高くなってる)
正月、美里たちが両親に連れられて宮本家を訪ねた時には、浩一はまだ丸がりの学生服すがたで、飲み食いしながらよくしゃべる大人たちの間に、だまってすわっていました。
「いばってやがんの、あいつ。春に、高校、卒業して、父ちゃんの船に乗り始めたもんやから」

浩一に「ばーか」と、何度もしかめ面を作る大介に、
「やめなよ、大ちゃん」
と、とうとう、美里はつぶやきました。
かみがのび、よれたTシャツにジーパン、サンダルばきの浩一が美里にはとても大人びて見えたのです。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに