「みーちゃん、波消しんとこまで行こう!」
女の子たちとの遊びにあきた大介が、海水浴場と外海との境に置かれた波消しブロックを指さしました。
「え、あんなとこまで?」
「平気だよ。ほら、浩一のやつもいる」
なるほど、浩一が他の青年たちといっしょに、波消しブロックの上にゆうゆうと立っているのが見えました。
「行こうよ、みーちゃんも!」
大介を先頭に、女の子たちがおよぎ出しました。
「ぼく、行かない。おねえちゃんもやめなよ」
新一はしりごみしましたが、美里は女の子たちの後について、およぎ出しました。
(みんな、出来るんだから、あたしだって!)
でも、先を行く大介とのきょりは、どんどん、開いて行く上に、気が付けば・・・。
(あれ、あたしひとり?)
美里はおよぐのをやめ、その場に立とうとして、どきんとしました。
(わ、足が届かない!)
こわくて、心臓が破けそうでした。
がむしゃらに浜に向かっておよぎ、やっと、足の届く場所までもどった美里は、女の子たちが、あさせで、何事も無かったかのように、きゃあきゃあ、ふざけ合っているのを見て、泣きそうになりました。
その時、
「だいじょうぶか、美里ちゃん?」
と、声がしました。
顔を上げると、浩一が、のっと、立っていました。
「うん・・・」
「大介につられたらあかんよ。あいつ、ときどき、むちゃするから」
浩一はそう言うと、外海の方へ、すいっと、もどって行きました。
美里には、浩一が、ほんのふたかきほどで、波消しに着いたように思えました。