がめ島うらしま館(4/14)

文・伊藤由美   絵・伊藤耀

「わあい、カブトムシ!」
と、新一も後に続きます。
「あ、だめだよ、二人とも! こうちゃんが・・・」
とはいえ、海の底を歩いてわたるなんて、めったにないできない経験です。

結局、美里も、わくわくしながら、二人の後を追いました。
むき出しになった海底には貝やヒトデが散らばり、あちこちで、魚が、パタパタ、もがいています。
ぬれて黒光りする岩には海そうやイソギンチャクが、ぺったり、くっつき、フジツボがあぶくをふいています。
3人が通ると、砂地はくぼんで、小さな池になりました。

海水が小川のように流れている所は、とりわけ、注意して飛びました。その下に思わぬ深みがあるかもしれないからです。
島に着くと、3人は、きゃあきゃあ、言いながら、鳥居に続く石段をかけ上って行きました。

ふり返ると、深緑の山が海岸までせまり、潮風でけずられたがけの下に家いえが集まっていましたが、浩一が待っているはずの海水浴場は、そこからは岬(みさき)がじゃまして見えませんでした。

「着いたぞ、一番乗り!」
とちゅうから三段上がりでかけ上がった大介が、真っ先に、鳥居の中に飛びこみました。
「あ、ずるい!」
美里も新一もすぐに続きましたが、そこで、今度は大介が、ぽかんと、口を開けていました。
「何だ、これ? 」
そこにあったのは、岸から見えたお宮とは似ても似つかない、きらきらしたガラス張りの建物でした。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに