5 うらしま館
5、6階ぐらいありました。
正面には大きな自動ドア。
そのかたわらに、チケット売り場のような小窓。
「こんなの、いつ、できたんや? お宮はどこへいった?」
大介はお宮を探しに建物の後ろに回って行きましたが、首をひねりながら帰ってきました。
「後ろには何にもない。入り口はここだけや」
「大ちゃん、ほら、これ」
美里と新一は、チケット売り場のはり紙を指さしました。
そこには白い和紙にすみの字で、「がめ島うらしま館」と、そっけなく、書いてありました。
「うらしま館? 何やろな」
「水族館だよ、きっと。前に遠足で行った松島水族館とそっくりだもん」
「大ちゃんが知らないなら、つい最近、出来たのね。職員さん、いないのかな?」
美里は小窓の奥に目をこらしてみましたが、だれもいません。
「どっちにせよ、おれたち、入れないや。お金、ないもん」
3人ともしゅんとなりました。のどがからからだったのです。
「帰ろう、海が元にもどらないうちに」
大介が鳥居に向かおうとした時、美里は、はり紙のすみに、豆つぶような字を見つけました。
「入場無料って書いてある」
「え、ほんと!」
大介が飛んできて、はり紙に目をこらしました。
「ほんまや。『サービスデイにつき、本日、お3人様にかぎり、入場無料』。すごい、おれたち、何てラッキーなんや!」
「そんな大事なことは、もっと、大きな字で書いてよね」
新一の声も上ずります。