「あれ、ここ、トイレじゃない」
広いホールに4つのとびらが並んでいます。
とびらには「春」「夏」「秋」「冬」と書いた4枚の木札がかけてあり、のんびりした歌が流れていました。
「しんちゃん、どこ?」
みさきは「春」のとびらを開けてみました。
梅がさいていて、うぐいすが鳴いています。
「3D映像の部屋だ。でも、すごく、本物っぽい。しんちゃーん!」
返事はありません。
次のとびらを開けてみると、海がまぶしくかがやいて、潮風まで吹いています。
「秋」の部屋には紅葉の森に立派なオジカが、「冬」のとびらの向こうには寒そうな空とあらしの海が。
「大変だ、しんちゃん、このどこかに入って、迷子になっちゃったんだ」
美里は、あわてて、ホールの入り口までもどると、水そうの前でタブレットにかがみこんでいる大介にさけびました。
「大ちゃん、あたし、新一を探しに行かなくちゃ!」
その時、「ブッブー」っと、いやな音がして、巨大水そうがバリンと割れ、水が、どっと、あふれ出し、生き物のように大介をわしどかみにして、水そうの中に引きこんでしまいました。
「わあ!」
ぶくぶくぶく・・・
水そうのガラスはあっという間に元通りになりましたが、中に閉じこめられた大介は、どんどん、水底へと引きこまれて行きます。