ぼくたちは夏の道で(6/12)

文・朝日千稀   絵・木ナコネコ

6 再会

翌朝。
「ラジオ体操の時間だぞ!」
猿神さんにたたき起こされた時にはもう、黒岩さんの姿はなかった。
そういえば、昨夜、明日は早出だとか、言っていたような。

なんてことは、さておいて。ぼくの頭は、すでに、パピの捜索モードになっている。
だいぶ前のことだけど、友だちの猫を捜したことがあるんだ。
だから、猫を捜す知識は、多少持っている。

【まずは、保健所に電話をかけて、迷子猫の特徴を告げ、保護を頼む。
近隣にポスターを貼り、捜索の協力をお願いする。
君のお家はここだよ! と教えるように、猫トイレの砂を家の周辺に撒く。
家の人が、やさしく名前を呼んでやる。】

と、当時のことを思い出し、頭に浮かべてみたものの・・・。
わずかすぎる・・・。
ぼくの持ってる情報は、あまりにも、わずかすぎる!

がっくりだ。
が・・・、いまのぼくには、強い味方がいた!
頼れそうな人が、いる!
そう、猿神さんだ!

昨日の電話の自己紹介によると、世間からは、名探偵猿神寅卯と呼ばれているらしい。
草むしり、ハチの巣払い、それだけにスポットを当てれば、確かに、便利屋的に思えてしまう(ぼくも、昨日は、名探偵らしくない仕事だな、と思ってしまった)、「人呼んで名探偵猿神寅卯」と名乗るからには、それなりの実績があるにちがいない。
猫捜しの方法も、熟知していることだろう。

朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。