がめ島うらしま館(9/14)

文・伊藤由美   絵・伊藤耀

「こらこら、ずるは行けませんねえ。早く、ゲームにもどってください」
「なにがずるだ、鶴島かめ代! しんちゃんを返せ! おれたちをここから出せ! でないと、警察をよぶぞ!」
「ふん、警察だって。そんなもの。ここに働くのは悠久の海時間。アリンコのように、ちょこまか、せわしく生きている人間の手のおよぶ世界ではないわ。そんなことより、ゲームを終わらせることを考えな。期限の1時間が過ぎれば、時間のかべができて、外の世界はここの1000倍のスピードで動き出すんだからね」

「1000倍? 100倍じゃなかったの?」
「それは1500年前の話だよ。今はジェット機が飛び、新幹線が走る時代だよ。時間ははるかに速いスピードで過ぎて当然さ。さあさ、ゲームにもどった、もどった! プツン!
プィン。そうだ、言い忘れるところだったが、探したって、ここまで下りてくるエレベーターなんかないよ。階段もね。では。プツン!」
「ばかばか、鶴島かめ代のばか!」
大介はタブレットをたたきますが、画面は暗くなりました。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに