その後、アカネはおばあちゃんにつれて行ってもらって、トオルと会うことができました。
「おばあちゃんに、すごくおこられちゃった」
「そうだよ、こんなに遠いのに、ひとりで歩いてこようだなんて。白ヘビさんが通せんぼしてくれたからよかったけど」
「通せんぼだったのかな? おこった顔して、ずっと『シャーッ』って言ってたよ」
「だって、だからアカネちゃん、家にもどったんでしょう? 白ヘビさんも、『危ないぞ、いくな』って、言ってくれてたんじゃないのかな。白ヘビさん、やっぱり神さまだったね」
トオルの言葉に、アカネの顔がぐしゃっとくずれました。泣きそうな顔でトオルをみつめます。
「アカネ、ヘビさんもお友だちじゃなくなったんだって思ったの。でも、そうだね・・・。ヘビさん、アカネをかもうとしなかった。おばあちゃんも、『ヘビは、敵しかかまないよ』って言ってた。それなのに、アカネ、ヘビさんに、『きらい』って言っちゃった・・・」
目から大きなしずくが、今にもこぼれそうです。アカネは、胸をゆっくりとなでます。
トオルは、「うーん」とうなると、
「じゃあ、白ヘビさんに、『とおせんぼありがとう』って言いに行こうか」
と、にっこりほほ笑みました。
トオルのあんに、アカネの顔が晴れわたります。
「うん、行く。でも、どこに? もう、シイの木のとこにはいないよ」
「あの田んぼは?」
「うん、そうだね。あっ、そうだ! アカネ、ヘビさんににあうリボンもってるから、それをプレゼントしたい!」
アカネとトオルは、次の休みに、シマ吉と最後に会った、町はずれの田んぼへ行きました。
「ヘビさ~ん」と何度もさけびましたが、シマ吉は姿をあらわしません。
二人は、青いリボンが風でとばないように石にはさむと、「白ヘビさんにとどきますように」と祈りながら、田んぼをあとにしました。
きいろいおひさまが、田んぼをやさしくてらしはじめたころ、シマ吉はあぜ道にのぼりました。
(あぁ、腹へった。あいつら、ちょこちょこと逃げ回りやがって・・・おや? なんだ?)
シマ吉は、あぜのすみの石の下に、青くキラキラと光るものを見つけました。光たくの美しい青いリボンです。リボンには、アカネのにおいがのこっていました。かすかに、トオルのにおいもしています。
(アカネ、ぶじに帰ったんだな。トオルにも会えたんだな。よかった)
シマ吉は、リボンを口に加えましたが、どうしていいかわかりません。
(こりゃあなんだ? おれにナゾかけたあ、アカネもシャレたことするじゃねえか。ひとつ、答えをききに行ってやるかな)
シマ吉は、ゆるむ顔をわざとふくらませると、あぜ道をしゅるるんとわたりました。
(おわり)