このままでは野生のアフリカゾウがいなくなる

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牙なしゾウのレマ
滝田明日香 文
小林絵里子 絵
NPO法人アフリカゾウの涙 協力
NHK出版

本書の帯のキャッチコピーがあまりに衝撃的だ。
「アフリカでは15分に1頭、ゾウが殺されている事実をあなたは知っていますか?」
子ども向けの絵本にふさわしくないコピーだが、いまアフリカで起こっている事実を知ってもらうためには仕方ないと思える。このままの状況では、あと10年ほどで地球から野生のアフリカゾウがいなくなるというのだ。

東アフリカにあるケニア共和国の国立保護区。たくさんの動物が暮らしている。アフリカゾウの子どもレマは多くの家族に囲まれ幸せだ。だが、お母さんはレマに人間には近づかないようきつく教える。レマのお父さんは人間の畑に近づいたため殺されてしまったからだ。

レマはすくすく育つが、いつまでたっても牙が生えてこない。兄弟や友達と容姿が違うことで引け目を感じてしまうレマだが、牙のない自分でも必要とされていることを知り、元気でたくましく成長していく。
しかしある夜、レマの家族や仲間に恐ろしいことが起こるのであった・・・。

私は、ネットを通じてNPO法人アフリカゾウの涙の活動を知った。象牙を目的に密猟が行われ、その方法があまりに残酷で、思わず目を伏せてしまったくらいだ。密猟の様子ははここで書くことをはばかるほどだ。そして密猟で得た金はテロリストの資金として流れているということもわかった。

世界中で多くの動物が絶滅の危機に瀕しているが、子どもたちが大好きなゾウ、絵本や童話の主人公にもなっているゾウが無惨にも殺され、テロリストの資金源にもなっている事実を知ってほしいと思い紹介した次第だ。

本書は巻末にアフリカゾウの生態が解説してあり、また直面する危機などについても詳しく書かれている。お子さんに本書を読んであげた後、親御さんは巻末の資料を読んであげて、アフリカゾウ保護のため、また絶滅の危機にさらされている動植物のために何ができるかを一緒に考えてあげてほしい。
そして著者で、ケニアのマサイマラ国立保護区の獣医師であり、また密猟対策の活動に尽力する滝田明日香氏とNPO法人アフリカゾウの涙を応援してあげてほしいと切に思う次第である。