ぜんぜん不思議じゃなかった3日間(14/15)

文・朝日千稀   絵・木ナコネコ

14 彼方へ

まだ日が落ちない海辺に、送り火がゆれる。
お精霊舟を待つお曳舟の先端を波がぬらす。
『魂送り』が始まる時刻が、近づいている。

『魂送り』は、お盆にこちらに帰ってきた霊たちを、彼の岸に送る風習だ。
カヤや竹で編んだお精霊舟に、先祖の霊や、身内の霊を乗せ、沖まで小舟で
曳いていく。
小舟は、お曳舟といい、乗れるのは、新盆を迎えた家の人たちだけだ。

朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。