舟に乗った人たちも、舟を見送る人たちも、ぼんやりとしていて見えない。
もともと、視力は、いいほうじゃない。
しかし、こんな急激に、悪くなるのか?
目をこすって、気がついた。
あたし、涙を流してる。
涙って、うえええーんと声張り上げて泣いた時に、流れるもんだと思ってた。
そうじゃない時も、流れるんだ・・・。
手の甲で涙を拭い、賢作さんの顔、もう一度、見たいと目を凝らしたがかなわなかった。
舟は、遠くなっていた。
夕日に向かい、舟が、行く。
西へ、西へ、彼の岸へ。
夕日が、落ちる。
赤く染まった海を舟が行く。
西へ、西へ、彼の岸へ。