『魂送り』を終えた海辺に、人影はない。
月も去り、寄せては返す波の音に包まれて、あたしたちは、今日の夜も、一緒に、流れる星たちを見てる。
「安達ケ原さんは、おじいさんが見えてたんだね」
「絢斗さんは、見えてなかったんですか?」
「ああ」
「しのさんも?」
「・・・おばあさんにも会ったの?」
「会った、というより、お見かけました。昨夜遅く、お精霊舟が編まれている神社で。盆踊りの輪の中でおじいさんと楽しそうに踊ってらっしゃるのを」
「あの神社で? 盆踊り? なかったけど・・・」
「そうなんですか・・・」
「でも、ぼくも、見たかったな、その、楽しそうなふたりの姿・・・」
「・・・ですよね・・・」
あたしも、絢斗さんに見せてあげたかった! です。
そして、あたしは、舟を編んでいる絢斗さんが見たかった! です。
現場に行った時、たぶん、絢斗さんもいたはずなのに、工程に見入り、雰囲気にのまれたあたしは、その姿を見逃した。
とても、とても、残念だ。
だが、残念気分にひたっている場合じゃ、ない。
「あのう」
「なに?」
「おじいさんの姿を見えてなかった絢斗さんから見たら、見えてたあたしの言動って、少し変だったんじゃ?」
「いや、少し変じゃぜんぜんなかった」
「よかったです!」
「激しく変だった」
「・・・・・・」
自分でも、わかるほどに、肩が落ちる。