それにしても。
なぜ、あたしにだけ、策作じいさんやしのさんの姿が見えたのだろう?
果たして、策作じいさんが語った話、
「お盆の花盛り町大字細八字猪甲乙には・・・」
って話は、ほんとうだったのだろうか?
でも、策作じいさんの言うことだからなー。
考えは、堂々巡る。
どこからか、
「ウソぴょんや」
という声が聞こえたような気がして、あたしは、空を睨む。
「ふーん」
「なにが、ふーんや、キツツキ」
「あたし、今になって思うんですけど。あの、ウソぴょんこそが、ウソぴょんだったんじゃないですか?」
「ア、 アホか、キツツキは」
「いえ、アホじゃありません! どちらかといえば、」
「どちらかといえばなんて、どうでもええ!」
「なんて、煙に巻こうとしても、無駄です! しのさんに持っていかせたい、というのは本心ですよね? トウウンさんに見せつけたい、というのも本心でしょうけど。・・・あたしが白猫のヌイグルミの横に置いたヒスイ、しのさんに、ちゃっかり渡したんじゃないですか? ひとつはしのさんをよろこばせ、ひとつは東雲さんの気持ちを奮い立たせた、そういうことですよね?」
「キ、キツツキ、おまえは、名探偵どすか!」
「そんなにテレなくても、よろしおす。あんさんが、シャイなお人やゆうことは、すっかりお見通しどすさかい・・・」
「キ、キツツキ、おまえ、口のへらんやつ・・・」
「お褒めに預かり光栄です」
頭の中、そんな会話が、勝手に浮かび、あたしは、空を、また睨む。
佐熊山策作さん、お精霊舟に乗る時に、
「またな」
って言ったの、覚えてますか?
来年のお盆には、しのさんと一緒に、ちゃんと帰ってきてくださいね。
「ウソぴょんは、あきまへんどすえ」