ぜんぜん不思議じゃなかった3日間(5/15)

文・朝日千稀   絵・木ナコネコ

5 ロマンの在処

話を、戻そう。
あたしは、いま、海にいる。
ヒスイを探すために、海にいる。
策作じいさんが、あたしに課した手伝いだ。

「ヒスイゆうても、そこらにごろごろ転がってるやつでは、あかん。わいらふたり、力を合わせて、お宝級のを見つけるんや」
ヒスイすら知らないあたしに、いきなり、ハードル、高すぎる指示が飛ぶ。

「お宝級のヒスイ、ですか?」
「そうや」
「見本、見せてもらえますか?」
「アホか、キツツキ」
「いえ、どちらかといえば、」
「賢いやつが、見本、見せろなんていわんわ! 見本があったら、探す必要ないやろが」
「なるほど。でも、あたし、そもそも、ヒスイがどんなものなのか・・・」
「なんや、知らんのか」
しゃあないな、と策作じいさんが長々と説明してくれた。
地殻変動がプレートをどうとかして、マントルの辺りからああなってこうなって、変成岩が・・・、蛇紋岩が・・・。
が、その怒涛と化した言葉から、あたしがすくい取ることができたのは、わずかだった。

朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。