ヒスイという漢字は翡翠と書く。
川にいる美しい翠(ミドリ)の羽を持つ鳥、カワセミと同じ漢字。
川の水流に洗われても、海の波に鍛えられても硬いヒスイは丸くならない。角張っている。重くて、白っぽくて、陽の光の中ではきらきら輝く結晶が見える。
白、グレー、黒などもあるが、鉄分が混じり混んだものは緑色で、チタンが混じり混んだものは薄紫になるらしい。
「5億年も前に出来た石が、山の奥から川を下り海に流れ着き、波に運ばれ、わいらの前に現れるんや。な、キツツキ、ロマンやろ?」
と長い説明が終わった頃には、ちょっと頭が、くらっとした。
「で、どこで、どうやって探すのですか?」
「そんなもん、ここで、根気よう探すに決まってるやないか」
「根気よく?」
「ほれ、見てみ」
足元に視線を落とすと、色とりどりの小石が目に入った。
砂ではなくて、小石が浜を作っているんだと、ここで初めて気がついた。